ジャスティスオンライン

374 名前:ジャスティスオンライン①[sage] 投稿日:2013/05/22(水) 02:13:39.20 ID:yHFdkYo5
MMORPG、ジャスティスオンラインは、MMOゲーム衰退が囁かれる昨今で、最も盛り上がっているゲームだ。
性別種族を網羅した多彩なキャラメイキング、四桁以上存在する装備を描く緻密なグラフィック、完全スキルポイント制による古き良きジョブシステム、ボイスチャットを標準搭載した高いユーザビリティ…
しかしその実、ジャスティスオンラインの真の魅力は、対人戦の奥深さにある。
ギルドという単位名の20人チームで、毎日競合ギルドと争う対人戦。
ジョブやスキルの振り方で変わる役割、ギルド単位で一試合一度しか使えない奥義、ボイスチャットによるリアルタイムコミュニケーション等、幅広い戦略性は、手軽なソーシャルゲームに流れつつあったMMOゲーマーを魅了した。
もちろんギルド戦には大きなメリットがあり、勝率の高いチームには限定武器が配布される。
そして、年に一度の大会、「ジャスティストーナメント」で一位になったチームには、「聖器(せいき)」と呼ばれる超レアアイテムが与えられるのだ。
聖器はジャスティスオンライン内で無類の強さを誇る武具で、一年に一度、一つしか放出されない超レアアイテムであり、ネットオークションに流れれば100万単位のお金が動くシロモノなのである。

375 名前:ジャスティスオンライン①[sage] 投稿日:2013/05/22(水) 02:16:08.50 ID:yHFdkYo5
僕--ミサオは、その聖器に手が届くところまでたどり着いたのだった。
僕がギルドマスターのギルド、「ジャスティス・ブレイヴ」は、数多の強豪を倒し、やっとジャスティストーナメント決勝戦までたどり着いた。

「ミサオ」ヘッドホンから参謀の声が聞こえてくる。「ついにここまで来たな。あと二時間で決勝戦だ…皆、準備は整ってるぜ!」

ああ、と応えながら参謀へのボイス出力をオンにする。
ジャスティスオンラインは、プライバシーとコミュニケーションの利便性を両立させるため、ボイスチャットの入出力を細かく規定することができるのだ。
対人戦の間はギルドメンバー、狩り中はパーティーメンバーといったように入出力をオンにできる。
また、リアルで用事がある時は入力だけオン、違う場所にいるフレンドと会話したい時はフレンドとだけ入出力オン、といった使い方も出来るのである。
今は試合前なので、各々自由に行動しており、ギルドチャットは切られている。
参謀がプライベートチャットを使って連絡を取ってきているのだ。

376 名前:ジャスティスオンライン①[sage] 投稿日:2013/05/22(水) 02:17:57.69 ID:yHFdkYo5
「今はどこにいるんだ?」参謀は続ける。「暇ならいつもの所で狩りしようぜ!」
「悪い。試合まで気を沈めたいんだ」
「ってことは、いつもの秘密の場所か?」
「人聞きが悪いな。僕だけの癒しスポットなんだ。詮索するなって言ったろ?」

そう、僕は今一人、誰もいない部屋で休憩していた。
ここは試合会場にほど近い、ニブルヘイムという街。
文字通り死者の住む街で、モンスターともエンカウントするダンジョンなのだが、街の外れの小屋の中だけは、モンスターが入ってこられない。
元々はクエスト進行のイベント用に作られた小屋なのだが、たどり着くための難度が高すぎる上にクエスト報酬がチャチすぎる為、実装後しばらくしてからは誰も訪れなくなった。
それに目をつけた僕は、いつでもワープできるよう座標を保存して、この小屋を隠れ家として使うようになったのだ。
たまに物好きなソロプレイヤーが訪れることはあるが、今のところ僕の住処が人に割れた様子はない。
僕は一人になりたい時、この小屋を訪れては暇を潰すようになっていた。

377 名前:ジャスティスオンライン①[sage] 投稿日:2013/05/22(水) 02:19:46.33 ID:yHFdkYo5
「わかってるよ」参謀はため息をついた。「ま、こっちとしては試合開始前に会場に来てくれれば問題ない。ミサオはジャスティスブレイヴのギルマスであり軍師、そしてエースなんだ。いてくれなきゃ困る」
「行くに決まってるだろ。待ち望んだ聖器が、もう目と鼻の先なんだ。例えリアルで親が倒れても試合には参加するさ」
「いや、さすがにそれはリアル優先しろよ…」

参謀はそう突っ込むが、僕は冗談ではなく本気でそう思っていた。
ジャスティスオンラインをはじめて二年、リアルの時間を割いてゲームに没頭し、仲間を集め、紆余曲折を経て強ギルドのマスターにまで登りつめて、やっとここまでたどり着いたのだ。
ギルドメンバーの誰より感慨深く思っている。
だからこそ、お気に入りの場所で一人、高ぶる気持ちを抑えているのだ。

378 名前:ジャスティスオンライン①[sage] 投稿日:2013/05/22(水) 02:21:44.70 ID:yHFdkYo5
「それより、いいんだな? 聖器は僕のものにして」
「おいおい、試合前にもう勝った後の心配か? ギルマス様が余裕で何よりだぜ。勝ったらもちろん、聖器はミサオのものだ。誰も異論はないよ」
「悪いな…」
「だから勝つ前に謝るなって! ま、確かに決勝相手のギルド、【サイレン】は格下だ。ギルドレベルもアクティブ数も、メンバーの仕上がり具合も段違い。普通にやりゃ負けることはない…が…」
「? 無名の成り上がりギルドだと思ってたんだが、何か知ってるのか?」
「いや、噂レベルなんだが…どうやら、ギルドメンバー全員が女性らしい」
「女性? ネカマじゃなくて?」
「ボイスチャット主流のジャスティスオンラインに、ネカマはほとんどいないって。聞いた話だが、実際皆が女性アバターで、オープンチャットで喋ると女の声が聞こえるって話だ。マジっぽいぜ?」

女性アバター…僕はジャスティスオンラインを二年間やっているが、女性アバターと出会ったのは数える程だ。
それも、大抵がボイスチャット拒否のネカマか、ネームで男とわかるようにして割り切っている少数派。
本当に女性プレイヤーが中に入っているケースはほとんど見受けられないし、あっても姫扱いしてほしいがためにログインしている痛い奴らばかりだ。
大会を勝ち進めるほどのガチプレイヤーが女性という話は聞いたことがない。

379 名前:ジャスティスオンライン①[sage] 投稿日:2013/05/22(水) 02:23:20.11 ID:yHFdkYo5
「あくまで噂だが」参謀はいぶかしむ声音で続けた。「どうやら奴ら、BOTを使ってレベルを上げた新参らしい」
「BOTって、アプリで自動でレベル上げることだろ? 規約違反だろ…運営仕事しろ」
「まだ確証はないんだろ。それに、サイレンの対戦相手は、何故か試合直前に棄権したり、不戦敗になったりするケースが多い…噂でしかないとは思うが、少なくとも今までのような相手とは違うだろうってことだ。気をつけろよ」
「わかった」

そう言って、僕は参謀とぼボイスチャットをオフにする。
全員が女性プレイヤーのギルド、BOT疑惑、対戦相手の原因不詳な棄権や不戦敗…
どうにも怪しいな、と思っていた矢先。
ほとんど誰も訪れることのない小屋の扉が、音を立てて開いた…。

391 名前:ジャスティスオンライン②[sage] 投稿日:2013/05/24(金) 06:59:12.69 ID:D+wAVsb5
「こんにちは~」
「……!」

死者の街にはそぐわない高い声と共に小屋へと入ってきたアバター。
それはジャスティスオンラインでは数少ない女性アバターだった。
一言でいえばくノ一だろうか。
紅白の細い布を着物のようにまとい、腰元の帯で縛るだけのシンプルな出で立ち。
帯で締められた腰は悩ましくくびれ、細い布からこぼれ出そうな釣鐘型の豊乳や、たっぷりと柔肉をたたえた臀部との凹凸をあられもなく強調していた。
ポニーテールの髪型に凛とした顔つき、そしてそのグラマラスな美貌に、僕は魅入ってしまう……彼女がゲームの中のアバター、0と1の組み合わせでできるデータでしかない事を知りながら。

392 名前:ジャスティスオンライン②[sage] 投稿日:2013/05/24(金) 07:00:55.41 ID:D+wAVsb5
「? 寝落ち中?」

そう言いながら近づいてくる女性に、手を上げるアクションで返事をする。
僕が中にいることを確認した女性は、改めて挨拶の言葉をオープンチャットで投げかけてきた。

「こ、こんにちは」僕は混乱のままに上ずった声で応えた。「あの、貴方は…」
「私はシラヌイ・マイ。マイと呼んで。貴方はミサオ君よね? 」
「なぜ僕のことを…」
「常勝ギルド、ジャスティスブレイヴのリーダー、今最も聖器に近いプレイヤー……有名人が謙遜するものじゃないわ」

408 名前:ジャスティスオンライン③[sage] 投稿日:2013/05/27(月) 01:54:20.43 ID:PyENskwE
いまだに動揺している僕をよそに、マイはなぜここにきたかの説明をはじめた。
ニブルヘイムのクエストにチャレンジしていたソロプレイヤーから、僕がここに入り浸っているという情報を得たこと。
そしてーー。

「サイレン……!」

マイがしれっと言ってのけたギルド名は、混乱していた僕の心を一瞬で猜疑心に染めた。

「そ。二時間後に決勝戦で戦う相手よ。ーーと言っても、私はサイレンの下っ端、試合にも出ない補欠要員だから、試合で会うことはないんだけど」
「何が目的だ!」

409 名前:ジャスティスオンライン③[sage] 投稿日:2013/05/27(月) 01:55:33.74 ID:PyENskwE
すっかり落ち着いた僕は、マイに与えうるすべての情報を確認しつつ問いかける。
対人戦に重きを置かれたジャスティスオンラインは、情報一つで勝敗が決する。
序盤はどのジョブにどのような働きをさせるか、中盤の駆け引きにどのカードを切るのか、終盤に残す奥義はどれにするのか……。
そういった情報が外部に漏れるだけで、ギルドの作戦は筒抜けとなり、その裏をかかれれば窮地に立たされるのだ。
彼女の目的がその情報なのだとすれば、手がかりとなりうる全ての情報をシャットアウトする必要があった。
オープンチャットのログはもちろん、身につけている装備一つで作戦の傾向を割り出されかねない。
僕は素早く装備を脱ぎ、上半身裸体の初期アバター装備へと切り替えた。

「あら?」それを見て、マイは鼻で笑う。「なにいきなり脱いじゃって……そういう趣味なの?」
「ふざけるな。なにが狙いか知らないが、ギルマスである僕から情報を盗めると思わないことだな」
「怖い顔しちゃって。ま、顔は見えないんだけど……」そう言って、マイは僕の目前までやってくると、胸の下で腕を組むポーズを取った。「でも、声だけでも感情は現れるものよ? あなたが思っている以上に、ね」
(…………!)

410 名前:ジャスティスオンライン③[sage] 投稿日:2013/05/27(月) 01:56:23.56 ID:PyENskwE
猜疑に染まっていたはずの僕の心は、しかしすぐさま動揺することとなる。
僕のアバターは床に座っていた。
ジャスティスオンラインはFPSビューがデフォルトのため、必然座っていると視線が低くなる。
そんな僕のアバターの前で、マイは立ちながら、乳房を寄せて上げるような仕草をしたのだ。
最新鋭の3D技術で描かれた、美しい女体のアバターが、むにゅりと乳房を変形させながら、誘うような笑顔を見せた。
僕は本能的に、視点変更の操作をして、そのアバターに見入ってしまう。

(す、すごい……ここまでモデリングが凝っていただなんて……!)

411 名前:ジャスティスオンライン③[sage] 投稿日:2013/05/27(月) 01:57:33.52 ID:PyENskwE
女性アバターに会うことが少ないため、今まで意識することはなかったのだが、こうして間近に見ると、作り込まれたアバターの構造に感心せざるを得ない。
まず、目と鼻の先にあるマイの下半身。
細い布を中心に垂らしているが、左右から臀部の肉が七割がたはみ出ている。
その色白な臀部も、まるでパンストを履いてるかのようにフェティッシュな光沢を帯びており、3D画像だからこそのエロティックさを感じさせる。
少し視線をあげれば、組まれた腕の上で、ゴム毬のようにムッチリひしゃげた両乳房が広がっていた。
釣鐘型の乳房は、下半身と同じく細い布に頼りなく守られ、現実世界じゃありえないであろう完璧な造形を保っていた。
そしてその上にあるのはーー色欲に任せてアバターを舐めるように見回す僕を、馬鹿にするように笑う顔。

(恥ずかしい……でも……!)

412 名前:ジャスティスオンライン③[sage] 投稿日:2013/05/27(月) 01:59:15.72 ID:PyENskwE
いつしか僕は、早鐘を打つ心臓に急かされるまま、夢中でキーボードを操作しては、女性アバターを様々な視点で眺めていた。
今まで馴染み深かったはずのゲームの世界に、こんなフェティッシュで淫靡な一面があっただなんて。
現実世界では再現し得ない、コンピューターグラフィックだからこそ作り得る、理想的な女体の造形。
それを前に、相手が敵ギルドの一員と知りながらも興奮を抑えることができない。

「さっきから鼻息が荒いけど」マイは、明らかに嘲笑のまじった声音で言った。「まさか、興奮してるの?」
「…………!」

図星をつかれ、僕は咄嗟に答えが出ない。
逆にごくりと唾を飲み込んでしまったことで、マイに事実を知られてしまう。

「マジで? ただのゲームアバター相手に、性欲たぎらせちゃってるの? うわー引くわ~! キンモーい!」

413 名前:ジャスティスオンライン③[sage] 投稿日:2013/05/27(月) 02:00:42.58 ID:PyENskwE
そう言って、キャハハと笑うマイ。
僕は屈辱に胸を締め付けられるが、その締め付けの中に、痛み以外の何かを感じ取る。

「まったく」マイはやれやれ、とアバターに首を振らせてから続ける。「最強ギルドのマスターと交渉だから、って気合いれて来たけど、本題に入る前にここまで盛り上がられちゃうなんて……予想外もいいところよ。しょうがないわね……」

そして。
マイは、信じられない一言を、ゲーム内オープンチャットを通じてささやいてきたのだった。

「いいわよ、そこでシコっても。チャットでイカしてあげるから」

  • 最終更新:2014-09-09 20:29:34

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