バスケ(前)

841 名前:バスケ(前)[sage] 投稿日:2009/08/16(日) 16:27:38 ID:uN+8c7Il
 体育の時間。
 バスケットボールの授業の締めに、3on3のトーナメントを行うことになった。
 チームは男女ばらばら。混合のチームもあれば、男子だけ、女子だけのチームもあった。
 バスケ部の佐藤健二は仲の良い山本良太と長井悟と組んだ。良太はサッカー部、悟は陸上部で、三人とも運動神経
は良い方である。
 案の定、健二たちのチームは勝ち進み、決勝にまで残った。
 試合の高揚感とともに、クラスメートの前で得意のバスケットボールを見せられることに健二は勇んでいた。
 先に準決勝を終えて、健二たちは決勝の対戦相手が決まるのを待った。
 たぶん、同じバスケ部の男子たちだろう。
(そこで勝って、いいところを見せてやる)
 健二には好きな娘がいたのだ。
 二宮綾、というどちらかといえば大人しい女の子である。色白で、綺麗な長い黒髪をストレートにした評判の美少
女だったが、健二はこれまでさほど気にも留めていなかった。
 だが、今年、同じクラスになって、妙に気になり始めたのである。
 小学校高学年の女子は男子より発育が早い。
 並みの男子よりも背が高い女子もいる。
 彼女もまたそうで、身長はさほどでもないのだが、身体つきは既に女らしくなっていた。
 最初の頃、健二はただ太っているようにしか思わなかった。
 確かに腰回りに肉がついていたが、それは女性特有の丸みといえた。腰のくびれはきゅっと締まり、幼いながらも
スタイルの良さを見せた。そして、その上にある胸のふくらみに気づいたとき、健二は目が離せなくなってしまった。
 運動が好きで、外で遊んでばかりいた健二にとって衝撃は大きい。実は自慰を覚えたのも綾の身体であった。
 そうした欲望はともかく、好きな女の子にいいところを見せたいと思うのは男の子なら誰にでもあることだ。
 だから、決勝戦の相手が決まったとき、健二は目を疑った。

842 名前:バスケ(前)[sage] 投稿日:2009/08/16(日) 16:28:55 ID:uN+8c7Il
「よろしくね、健二」
 すらりと背が高く、ショートカットがさわやかな印象を与える少女、高橋茜は女子バスケ部の部長である。活発な
性格で、綾とは対極の雰囲気だが、学年では男子からも女子からも人気があった。
「お、おう・・・・・・」
 確かに、女子で勝ち進むとしたら彼女のいるチームだろう。
 もう一人も女子バスケ部の原村千明だった。こちらは小柄だがすばしっこいタイプで、彼女が走るとポニーテール
がふわりと舞って尻尾にように見えたのを練習で覚えている。
 この二人の組み合わせは非常に厄介だ。
 だが、三人目が解せない。
「よーし、綾、千明、がんばって優勝しよう!」
「おー!」
「う、うんっ」
「・・・・・・・・・・・・」
 そうなのだ。茜のチームの三人目は誰あろう、二宮綾だった。
 思えば彼女たちはタイプは違うが仲が良かった。バスケの試合に応援に来てもいた。
 それでも健二が信じられないのは、綾の運動神経だ。お世辞にも運動は上手いとは言えない。足は遅い方だったし、
体育の授業中の練習でもなかなかシュートが入らなくて悪戦苦闘していた。
 チームの中で綾が足を引っ張るだろうことは間違いない。勝ちにこだわる茜の性格からすれば不思議であり、それ
でも決勝まで来てしまうのには驚きだった。
「健二ー、女に負けんなよー」
「俺たちの仇をうってくれー」
 彼女らに負けた男子たちだ。決勝戦は男子・女子それぞれの代表の対決となって、クラス中からの注目が集まった。
「おう、任せろ! 良太、悟、優勝するぞ!」
「「おお!!」」
 綾に勝たせてあげる、というのもありではあるが、健二は頭が回らなかった。
 むしろ、男のプライドとして女には勝たなければならない。気合を入れなおして、健二たちはアップを始めた。

「ねえ、やっぱり、私・・・・・・迷惑になってないかな」
 綾は心細げに言う。
 クラス中に注目されて、元々が内気な彼女は自分のせいでチームが負けることが怖くなったのだ。
「いやー、そんな気にしなくていいよ、綾ちゃん」
 あっけらかんと言う千明。この元気少女は勝ち負けより楽しければ良いというタイプなのだった。
「決勝に出られたし。みんなが見てるのってわくわくするじゃん」
「ここまで勝ち残ったのは三人でがんばったからだよ。綾がそんなこと心配しなくて大丈夫。どうせなら、優勝しちゃ
おうよ」
「でも・・・・・・佐藤君たち、すごく上手いんじゃない・・・・・・?」
「まあ、今までで一番手ごわい相手だけど。ちょっと作戦があるんだ」
 茜はにやっと笑う。千明が首を傾げた。
「作戦? どんな?」
「とりあえず、私が試してみるから。二人は今までどおりやってて」
 茜が視線を逸らせた。その先には、パス回しをする健二の姿がある。
「うまくいけば、綾がうちの秘密兵器になるかな」

843 名前:バスケ(前)[sage] 投稿日:2009/08/16(日) 16:32:27 ID:uN+8c7Il
 ピーッ
 教師が笛を鳴らし、試合が始まる。
 先攻は茜たちのチーム。健二たち男子三人はゴールを囲むように守りに入った。
 ドリブルしながらゆっくりと近づいていく茜。その横から飛び出し、千明が男子チームをかき回しにかかる。
(へっ、そんなもの、お見通しだ)
 この二人ならそうした戦法をとってくるだろうと読めていた。健二は千明に悟をつけ、マークさせていた。陸上部の
悟なら千明の動きについていける。
 千明がマンマークされたことで、茜はやり方を変えざるを得ない。反対側にいた綾にゆっくりとパスを出した。
「っ!!」
 なんということもないパスだが、綾はこぼしそうになりながらキャッチした。あれならいくらでもカットできる。
 しかし健二は、ボールを抱きしめるように捕った綾の胸が柔らかそうに歪むのを見てしまった。早熟な果実はやさし
くボールを抱きとめる。一瞬、あのボールになりたいなどと思ってしまい、慌てて雑念を振り払った。
 綾はつっかえつっかえしながらドリブルしていく。良太が動いた。彼女はドリブルに精一杯で周りが見えていなく、
隙だらけなのだ。
「綾!」
 茜が呼びかけて、ようやく気づいたらしい。茜に向けてパスを放ったが、素早く良太がカットしてしまった。
 教師が笛を鳴らした。攻守交替である。


 やはり、綾はこのチームで足を引っ張っている。
 周りで見ているクラスメートの中にはそのことを野次る者もいて、教師に叱られていた。茜や千明はそ知らぬ風であ
るが、綾は居心地悪げに俯いていた。
 健二は罪悪感のようなものを感じたけれど、試合に集中することにした。
 千明が良太にボールを返し、試合が再開される。
 良太は最初から全速力で突っ込んでいく。健二、悟も両側から上がる。
「パス!」
 綾と千明が良太を止めに来て、健二は素早くパスを受けた。
 シュートするには少し遠い。
 健二はドリブルでゴールへ近づきにいくが、茜がディフェンスに張り付いてきた。
「行かせないよ、健二」
 女子の中でも背が高い彼女は健二と身長でほとんど変わらない。パスコースをつぶしてくる技術が巧みで手強かった。
「くすっ」
 大人びた、端正な顔立ちがほころぶ。
 他の二人も千明と綾がマークしていてパスが回せない。自力で抜けるしかなかった。
 それにしても。茜の身体がやけに近い。温かい吐息にドギマギしてしまって、健二の動きが鈍った。
 バスケ部で男女混合の練習はときどきやっていた。茜と競り合うことも初めてではない。だというのに、さっきから
彼女を抜けないでいるのはこのためだ。
 臙脂色のブルマに包まれた小ぶりなお尻、無駄な肉のない長い脚、そして、綾ほどではないがふっくらとした胸。健二
は茜の肢体から目を離せなくなり、集中できず、勢いを削がれていた。
「フフ」
 その微笑が妙に艶かしい。
 先ほどの綾の胸も思い出されてしまって、健二の動きはますますぎこちなくなる。

844 名前:バスケ(前)[sage] 投稿日:2009/08/16(日) 16:33:39 ID:uN+8c7Il
(くそ、なんでこんなときに・・・・・・)
 股間が充血し始めて、前かがみになってしまう。
「健二! 戻せ!」
 悟だ。千明のマークを抜けてきて、健二の後ろに回る。
 視線をそちらに移し、パスを送ろうとした、そのときだった。
「ふふっ、だ~~め♪」
 悪戯っぽく、どこか男の心を惑わす小悪魔のような声音が、耳元でささやいた。
「えっ!?」
 気がつけば、茜は触れそうな距離にまで近づいていて、

 ふうっ……

生温かい吐息が耳たぶを侵した。
 ぞくぞくする、正体のつかめない感覚が背筋を這い上る。
「あ、……ああっ」
 途端、すべての力が身体から抜けていった。
「ボールもーらいっ!」
 そんな隙だらけの健二からボールを奪い取ることなど、茜にとっては至極容易い。
 再び、攻守交替の笛が鳴った。


「どうしたんだよ、健二」
「わ、わりぃ……ちょっと気が抜けてた」
 再開を前に、男子チームは集まった。悟がパスを回されなかったことに不満をこぼす。
「頼むぜ。あいつら、思ったより手強い。女子には負けられないからな」 
 良太も言う。
 三人とも、クラスでは運動神経の良さで知られている少年たちだ。運動会、球技大会、マラソン大会といった校内行事
では率先して活躍し、クラスメートから頼られる存在である。そして、そのことに彼ら自身も自信をもっている。
 それが、皆の前で女子に負ければ、どうか。
 特に茜は女子のリーダー格だ。負けた後しばらく頭が上がらなくなる。
 彼らにとってそれは著しくプライドを傷つけることだった。
「よし! やるぞ、即行でボールを奪って、次で決める」
「「おう!」」
 意気を上げる二人を横目に、健二はちらっと女子チームに視線を走らせる。
「…………っ!」
 綾と目が合った……ような気がした。
 いや、気のせいではない。少し不安そうな綾と、相変わらず屈託ない笑いを浮かべた千明。そして、どこか含んだ表情
の茜。
 嫌な予感がする。
 さっきと同じ手を使ってくるのか。
「もう、惑わされないぜ」
 健二は呟き、コートへ戻った。

845 名前:バスケ(前)[sage] 投稿日:2009/08/16(日) 16:35:32 ID:uN+8c7Il
 今度は男子チームが守りである。2点先取で勝ちとなる、単純な3on3。しかし、決勝ともなればクラス中の注目が
集まり、盛り上がる。
 歓声を背に、ホイッスルを聞く。
 茜のパスを受け、突っ込んでくるのは千明。素早いドリブルで守りの隙間に切り込んでいく。
 悟と良太が二枚がかりで止めに行く。
 そう。
 綾が最初から戦力外なら、茜さえ健二が足止めすれば、戦力的のは男子チームが有利になるのである。
 さすがはバスケ部の千明。男子二人がかりにもなかなかボールを奪わせない。けれど、その粘りも援護がなければ
時間の問題である。
 健二は茜の動きを牽制しに走る。
 残る綾はパスを受けることもドリブルも覚束ない。少し後ろめたい思いが健二の心を痛めたが、最終的には女子に
負けたくない気持ちが上回った。
 そんな、迷いを残した健二だから、思わず目を疑った。
「え……?」
「ま、負けないよ、健二くん」
 心なしか震えた声音。即座の動きに反応できるとは思えない、硬く不器用なフォーム。
 健二の前に立ちはだかって来たのは二宮綾だった。
「うっ、……あ、ああ」
 綾は不安と怯えを含んだ表情のまま、じりじりと近づいてくる。
 文化系らしい優しげで可愛らしい顔立ち。艶やかで長い黒髪は体育の授業ということで、後ろで一纏めに束ねている。
 健二の視界を綾が埋め尽くし、足を止めてしまう。
 まるで予想外だったが、考えてみればこれほど有効な作戦もない。
 健二を綾が止めていれば、茜は完全にフリーになる。いかに運動神経の良い男子二人でも、茜と千明、バスケ部の
女子二人組相手では分が悪い。
 ほの甘い、少女の匂いが健二を包む。いつのまにか健二の方が押され、少しずつ後退していた。
 
 茜は千明の援護に回りながら、二人の様子を観察していた。
 一生懸命に健二の動きを妨害しようとマークする綾。距離が縮まるごとに戸惑い、焦りの表情を浮かべる健二。
 一瞬、健二と目が合った。
 にやっと意地悪く笑ってやる。小馬鹿にしたような、見下すような、嘲笑で。
 クラスの情報に敏い彼女は、健二が綾に恋心を抱いていることを知っていた。健二は部活の仲間でライバルといっても
いい相手であり、綾はタイプはだいぶ違うが昔から仲の良い親友だった。
 いずれくっつけてやれ、というお節介で二人の仲を確かめていたのだが、こんなところで役に立つとは。
 綾には特に何も言ってない。くっつくくらい近づいて健二をマークするように、という指示だけだ。
 好きな子にメロメロにされたまま、負けてしまうといいわ。
 滑稽なほど術中に嵌まった健二を、茜は嘲笑った。

846 名前:バスケ(前)[sage] 投稿日:2009/08/16(日) 16:36:52 ID:uN+8c7Il
 まずい。
 茜の笑みを見て、健二は何事か判然としないながらも危険を感じ取った。
 既に千明は茜にボールを送り、二人のパス回しに良太と悟は手が出せなくなっている。
(俺が行かなくては)
 そんな焦燥も、目の前の少女の姿に萎んでしまう。
 体操服に包まれた、柔らかそうなカラダ。ふっくらとした早熟な果実が服の下で揺れて見えるのは、気のせいでは
ないだろう。そして、細い腰のくびれの下には、艶めかしいヒップとむっちりした太ももがある。ブルマからのびる
太ももは、茜のようなしなやかさではなく、女らしい肉感で男の欲情を煽った。
 発育の早い少女の色香は健二には刺激が強すぎた。
 こんなに近くでまじまじと見たのは初めてだというのもある。また、綾の大人しい性格のためか、彼女の普段の服装は
やや地味で露出の少ないものばかりだった。体操服は彼女の身体のラインをはっきりと見せ、今どき珍しいブルマが露わ
にしていく。
「……くん、……じ、くん? 健二くん?」
「…………えっ? あ……」
 完全に綾の肢体に見惚れていた健二は、当の彼女の呼びかけで我に返る。訝しげに見上げる綾の顔。試合中だという
のに我を忘れ、挙句には好きな女の子の身体を貪るように見つめていたのだ。恥ずかしさに健二の頬が熱くなる。
「大丈夫? どこか調子が悪いの?」
 対戦相手でも気にかけてしまう優しさというか人の善さが綾にはあった。彼女にしてみれば、なぜ健二が自分のマーク
を抜けずにいるのか不思議でならない。
 まさか、自分の美貌とスタイルの虜となってしまっているなどと、夢にも思わないだろう。
「い、いや、なんでも、ない……」
 歯切れ悪く答えて、健二が目をそらした、そのとき。
 笛の音とともに歓声が上がった。
「「あ……」」
 はしゃぐ少女二人と、がっくりうなだれる少年二人。それだけで明らかだった。
「茜ちゃん、千明ちゃん」
 綾が二人に駆け寄っていく。茜がV字のピースをし、千明が綾に抱きつく。
 クラスの面々の反応も対照的だった。男子たちはため息をつき、男子チームの不甲斐なさをなじった。女子たちは歓声
をあげて、口々に女子チームを称える。その中には、健二を一歩も動かさなかった綾への賛辞も聞こえた。
 そして、その合間。茜があの嘲笑を浮かべて健二を一瞥した。
 頭に血が昇っていく。まだ1点だ。次で取り返してやる。
 健二は頬を思いっきり両手で叩いて気合を入れ直した。

  • 最終更新:2014-08-19 22:17:17

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